速度を守って運転したら案外楽しかった話

先日の仕事帰り、スピード違反で捕まってしまった。いわゆる「ネズミ捕り」だ。

 

完全に油断していた。車を止められて、警察だと分かった途端頭が真っ白になった。状況が理解できたところで言い渡されたのは、反則金1万2000円の支払いだった。

そこは40キロ指定の住宅街だった。ただし道路の幅はかなり広く平坦で、車も少なく見晴らしはかなり良い。(「ザ・北海道の田舎道!」といったところだ。)正直なところこの道路を標識のとおり40キロで走っている人などまるで見たことがなかった。同じ職場の人間も含めて。それ故「どうして私だけ…」という考えが頭をよぎらないわけではなかった。

 

 

じゃあ考えよう。何で他のスピードぶっ放しマン達は捕まらないのか?それはネズミ捕りがいてもその場でスピードを落とすから。私はそれができなかった。車を止められるまでネズミ捕りの存在に気付かなかったからだ。…あれ、それって滅茶苦茶危険なことでは?

 

(もちろんこの時の違反の本質は速度超過であることを踏まえて)私はよく周りを見ていなかったのだ。我ながら思い出すたびに本当に恐ろしい。そもそも人影が視界にあったら何かしら注目して気にするものだろう。いかにこれまで油断して危険な運転をしていたのかと猛省させられた。

 

そしてそもそもの違反、速度超過。これを日頃から守ってさえいれば捕まることなどなかったのだから。初心者のときは、それはもう運転自体が不慣れながらも速度をよく守ったものだ。何事もスピードを出しすぎないに越したことはないから。あれから3年半、運転には慣れたけど、随分調子に乗って、意識の低い雑な運転になってしまっていた。でも、初心者だった頃の記憶と感触はまだ残っている。

 

違反の切符を切られた次の日も仕事だった。ちなみに職場は車以外ではとてもいけない場所。これまでの運転の仕方を改め指定速度どおりとなると、朝家を出る時間も早めなきゃと思った。(夏場だと片道で40分弱かかる地味に長い距離。)

 

もう運転なんかしたくない、車なんて見たくない、怖い、といつまでも落ち込んでいたかったけど、そんなわけにいかないし、ただの現実逃避だ。違反を犯したけど免許が取り上げられなかった理由、それは安全運転に戻れる余地があるからだろう。ネズミ捕りも、「運転する人間を減らしたい」なんて理由でやっているのではない。(と思う…。)

とにかく初心に帰って運転しようと決めた。この先違反を犯さず安全に運転することが最も反則金に意味を持たせられることだろうと考えた。1万2000円…高すぎる。反則金以上に無駄な支払いってあるだろうか?

 

 

翌朝、有言実行したつもりだ。情けないが、速度標識を逐一確認したのは久しぶりだった。身を引き締め、かなり緊張…もしたはしたけど、実際のところは意外にも楽しかった。運転を楽しいと思ったこともまた、久しぶりだった。

 

速度を気にする分、時間のことは二の次になる。時間を気にせず運転できることで心にゆとりが生まれてストレスから解放された気分になった。急いでしまうとそれだけで切羽詰まってイライラする上に、周りの車が鬱陶しく思えてしまう。しかし気を付けるようになってからは速度どおりに走る車が前にいると、とても有難く感じられる。(前に誰もいないとプレッシャーが増える…。)

そして何よりルールを守って運転しているのだから、変な後ろめたさが消えて堂々としていられる。周りがどれだけ飛ばそうと、後ろから距離を詰められようと、速度を超えない私が正しい。いわゆるちょっとした煽りに対しても以前よりイライラしなくなった。好きな音楽を楽しみながら、自分のペースで、ゆったり。こうやって出勤できたほうが絶対に良い。

※朝家を出る時間を早めたことによるメリットが多く、それありきの話である。

 

肝心の通勤時間だが、何と驚くほど変わらなかった。…田舎道をとばして通勤していたことがいよいよ馬鹿らしく思えた。車をぶっとばすことに快感を覚える人種もいるだろうが、少なくとも私は違う。思えば「急ぐこと」自体が嫌いでさえある。もうこれ以上考えることもない。運転の仕方を改めようと思った。

 

 

呑気に文章を連ねてきたが、違反をしたことに変わりはない。切符の裏面にある「交通反則通告制度に関する説明」にこんな文言がある。

反則金を納付すれば刑罰が科されなくなる』

つまりあくまで犯罪と言ってしまっても過言ではないと私は思う。運転は続けるけれどこの事実は重く受け止めたい。私の周りもそうだが「1点引かれたくらいどうってことない」と励ましてくれる人がいるかもしれない。その優しさは有難く受け取るとして、かなりどうってことある話なので相応に気にして猛省するべきだ。

 

ちなみに速度超過で言えば指定の30キロを超えると一発で免停になる。これを読んでヒヤッとした人はいないだろうか?

そして他にもスマホ運転や一停無視、信号無視もよくありがちな違反らしい。(詳しくは自分で調べて確認してください。)

 

くだらないことで私と同じような悲しい思いをする人が減ってほしいと思う。誰も巻き込んでいない、何も壊してない、だから個人の「くだらないこと」なんて表現できる。これはある意味不幸中の幸いかもしれない。何かが起こってからでは遅すぎる。

所詮はスピード違反をした人間の言うことにすぎないが、もし何かが心に響いた人がいるなら自分の運転を考えるきっかけにしてくれたら幸いだ。1万2000円もほんの少しは浮かばれる。

そして、どうせだったら「楽しく」運転できるドライバーさんが増えますように…。