窮鼠はチーズの夢を見る を観てきたよ(雑感)

原作未読。腐女子

ネタバレ注意。(ただし曖昧な部分アリ)

思ったことを殴り書き。

 

 

 

 

 

頭から恭一と今ヶ瀬のことが離れない。

 

予告や宣伝の時点で、ハッピーで楽しげな話ではないことは分かっていた。もちろん、観終わった後の爽快感は何一つない。では、後味の悪いモヤモヤした作品なのか?全くそんなことはない。

 

ひたすら、つらい。

 

誰も幸せになれない。映画の中の時間が進めば進むほど、登場人物たちの抱える心の辛さは増すばかりで、つらい思いをする人間もどんどん増えていくだろう。

「早く終わってくれ」なんてことも頭の隅で考えてしまった。どこまでも美しい2人をずっと観ていたいという思いとは裏腹に。

 

 

○大伴恭一

クズ男。彼に関わった人間はみんな不幸になる。こんな男に惚れ込んでしまった今ヶ瀬が可哀想で仕方なかった。これが正直な第一印象だ。

でも、不思議とこのクズ男に腹は立たなかった。腹の立つ言動はあったけど。この男はあまりに魅力的すぎる。寄り付く女が後を絶たないわけだ。キラキラ整ったルックスで、背が高く包容力(物理)もあって、仕事もできる。恋愛関係を除いたら改めて非の打ち所がない男だ。ただし、女が惹かれ行くポイントは多分そこじゃない。イケメンであることが大前提である上の、目が離せなくなるような弱さというか抜け感というか…一言で表すなら「色気」。

今ヶ瀬が何でこいつに惹かれたのかはわからない。それこそ理由なんて吹き飛んでしまうような、圧倒的な魅力…。私はこのクズ男を好きになれないまでも嫌いになれなかった。でも恋愛においての行動はどう頑張っても褒められたものじゃない。それを憎らしいというよりは哀れに思えた。哀れな男。

色気のあるイケメン故に後を絶たない女達。それにけじめを持って付き合っていくことのできない、(私から見れば)真の愛し方を知らない、哀れな男。

イケメンの人生も大変だね…笑

 

不本意だけど、恭一は「憎めないキャラ」である。振り回される周りのことを考えると実に不本意

主人公だから当たり前だけど、彼を中心に物語は動くので、渦中の男であり、悪く言えば「元凶」。それでも彼は決して「悪者」ではない。こんなやつが悪者ではないから、この物語に悪者はいない。

悪者のいない世界は現実的で、よっぽど残酷だと思う。悪者という存在がはっきりしていれば、人々の恨みつらみをぶつけられる明確な的になる。逆に悪者がいなければ、視聴者も含めて辛さのやり場を一切失ってしまう。

でも、実際に生きてるこの世界に明確な悪者などそういるものではない。現実はそんなものだ。だから理不尽で残酷だ。

私はジャンル問わず悪者のいない作品がすごく好きだし印象に残る。恭一が悪者と断定できない存在だからこそ、つらくて狂おしい物語になったんだと思う。

 

 

○色んな女

劇中で恭一と関係を持った女性は4人。誰もかれもまた魅力的なキャラクターだった。個人的に、女性キャラを丁寧に扱うBL作品は好感が持てる。理由は上手く説明できないんだけど…話が面白く感じる?かな?

中でも特に印象に残ったのは「たまきちゃん」。彼女は作中きっての「いい子」だ。真面目て一生懸命だけど、まだ良くも悪くも世間知らずでこれから大人の汚い部分を知っていき、彼女も汚れていくかもわからない…。少なくとも恭一との一件はいい子のたまきちゃんに影響を与えただろう。

たまきちゃんと恭一がくっつくフラグ自体は序盤から立っていたけど、実際にくっつくのは作中の女性陣の中では最後。これが大きな衝撃だったし、物語の不穏な空気を強めたと思う。最後の最後にこのいい子を持ってくるか!?という。最後というと物語が進んでつまり恭一と今ヶ瀬との関係もより深くなっていってるということだ。そんな中で関係を持つのはリスクが高いだろうに、そのタイミングで純粋に恭一を慕い、尽くそうとするたまきちゃん…。これもまた残酷な話だった。

多かれ少なかれ予想はつくが、作中でたまきちゃんはフラれる。恭一のはっきりしない言動にこちらは腹が立ちつつも、たまきちゃんは涙を流しながら元カノ(ほんとは違うけど)の存在を許してまで恭一の側にいたいと言う。

いたたまれない気持ちになった。女の子を泣かせて恭一め…。たまきちゃん若いしポテンシャルあるし、もっといい男の人が見つかるよきっと…。

 

 

○今ヶ瀬

今私は実写映画を観ているんだよね?と確認したくなるくらい漫画の世界の人だった。これは成田凌の話になってくるか…。

恭一を見る目がいちいち切ない。満たしてくれと言わんばかりの柔らかい物腰や動作も切ない。中性的な雰囲気の人だと思いきや、「俺と寝てください」「側に置いてください」など要望をはっきり言えるところは男らしさを感じた。そしてふらふらしている恭一が路頭に迷ったときに行きつける先としての安定感も感じた。(ストーカーなんだけど…ね。)

不思議な人。でも彼は幸せになれることはない。そう思ってしまってから悲しくて仕方がなかった。恭一を好きでいる限り彼は幸せにはなれない。でも恭一以外の人を好きになることも、無いんだと思う。

挙げ句の果てに終盤のSEXで今ヶ瀬は苦しそうに泣いている。もっと終盤で「好きだったなあ」というセリフも吐いている。元々恭一みたいな性格は嫌いだとも言っている。心の底で恭一が嫌いなのも事実なんだろう。でもそれは本当だったとして今ヶ瀬自身がそれを認められないし認めることはできないと思う。

つらい…。

かわいい今ヶ瀬の幸せも望んでしまうところだけど、彼が幸せになれないのはまさしく彼自身の問題もある。映画が終わった後も今ヶ瀬のその先を考えると悶々とする。これは恭一もそう。

ラストの後も、個人的には今ヶ瀬はなんかのタイミングで恭一の所へ戻りつかず離れずを繰り返しているのを想像する。終わらない快楽と苦しみ。正直あまり想像したくない…。

なんというか、好き勝手書いたけどもう一度観て改めて2人のことを考えたい笑

まだ今ヶ瀬がわからない。

 

 

○濡れ場

美しかった。濡れ場に限らないけど、大倉さんも成田凌くんも美しすぎた。

想像していた濡れ場の量の3倍も4倍もあった。こんなに観ていいの!?という気持ち笑

カメラワークだったり、照明だったり、演出もすごいなあと思った。何回言うのって感じだけど、とにかく美しかった。

最初は今ヶ瀬にされるがままで恭一が下だったけど、気づいたら今ヶ瀬が下になっていた。(心の中でガッツポーズをしてしまった。)映画ではその経緯は語られてなかったけど、原作では何かしらその辺のお話もあるのかな。気になるところだ。

 

 

1分1秒、一瞬も目の離せない登場人物の細微な動きや空気感、魅力的なキャラクター、重なっていく苦しさと辛さ、本当に素敵な映画でした!!印象に残ったところを思ったまま書いたので語り尽くせていないところだらけ。早くもう1周したくてたまらないです!!

 

 

最後に、

大倉さんの体調が快方に向かうことと、皆さまどうか健やかに過ごされることを願います…。